インタビュー

ひたむきに漆と向き合う。

廣田純一Junichi Hirota
広田蒔絵工房

日本の伝統技法による蒔絵を主とし、刀剣鞘塗り・金継ぎ・漆文化財修復・金箔、それから、オリジナルデザインのお椀・小鉢漆塗等を手掛けております。

後にも先にもないほど、光栄な仕事だった。

インタビューに答える廣田さん。

普段のお仕事、手掛けた修復についてお聞かせください。

漆面に漆で絵や文字などを描いたところに、金や銀、貝などの粉を蒔く「蒔絵(まきえ)」という技法を使って、箸や、お椀、刀の鞘などの漆器全般に装飾しています。

修復・復元に携わったのは、名古屋城や上野東照宮、深志神社の山車、県宝などさまざま。名古屋城で修復を担当したのは、本丸御殿。天井やふすまの枠に、徳川家の家紋などを施して。この先、いつあるか分からない光栄な仕事でした。

これまでの努力が、報われたような気がした。

長野オリンピックの蒔絵も担当されたそうですね。

蒔絵チームのリーダーとして、メダルのオリンピックエンブレムや、山並みなどを装飾しました。制作数も多くて大変な仕事だったけれど、表彰台に上がった選手の首にメダルがかかって、喜んでいる姿をテレビで見られたのは嬉しかった。「やっと終わった」と一安心することができた。

特にスピードスケートの清水宏保選手が金メダルを獲ったときは、感動。報われた気持ちでした。

広田蒔絵工房の漆室

過程を突き詰める。

熱中するのは、どんな時でしょうか。

刀の鞘に模様をつける「変わり塗り」をしている時。古い時代に作られた、鞘の修復も依頼されるのだけれど、昔の塗師が、どうやって模様をつけたのか分からん時がある。そこを突き詰めていく過程がおもしろいところ。

江戸初期からは戦も少なくなったから、武士たちは、鞘に模様を施して、嗜みとして楽しんでいた。昔の人もおしゃれを楽しんでいたと思うと、今とそう変わらないのが伺える。

丁寧に鞘を研ぐ廣田さん。