インタビュー

お客さんの期待を超える。より良いものを作りたい、あくなき向上心。

宮原 守人Morito Miyahara
柏屋常左衛門商店

創業以来、木曽漆器に携わり、漆器製造販売を行ってまいりました。

店主、宮原守人は六代目になり、長い歴史の中でも漆器に対する情熱を失うことなく、木曽漆器の老舗として続けてまいりました。特に伝統的に使われてきた漆器道具を取り扱い、「名刺盆」・「賞状盆」・「茶道具」や日常生活に欠かせない「お椀」・「お皿」等、多数の木曽漆器を扱っています。

インタビューに答える宮原さん

どんな漆製品を扱うことが多いですか?

漆器の販売をやってきて、付き合うお客さんによっても、時代によっても主力商品はどんどん変わってきた。今はね、料理屋さんとかホテルの日本料理店の料理長と付き合いながら料理のものを売ってる。去年はあるお店からおせちの重箱と雑煮椀を依頼されて、提案したら採用されてね。去年はコロナで飲食業も苦しかったと思うけど、GO TO効果もあって、いっぱいきてくださってたみたいで。ああ、提案してよかったなあと。最初の提案から何年も関係が続いているお店もあるねえ。

それから個人のお客さんには弁当箱。結婚式の引き出物に使いたいっていう人がいて、70個ほど持たせてやったら反響がすごくてね。家中で子供にあげてもいいとかね、贈り物にうんと喜ばれることがわかったね。

漆塗りのわっぱ弁当
柏屋常左衛門商店の外観
様々な漆器を取り扱う

現在6代目、もともとは違うお仕事をされていたと伺っています。

私は実は養子に入ったくちなの。もともとは清涼飲料水メーカーで働いていたんだけどね、漆器業は地道にやっていく商売で、絶対に尊敬されるし、うんといい仕事。初めていった場所で「木曽の漆器屋です」っていうとね、反応がやっぱ全然違うんだよね。違う商売でいくともしかしたら煙たがられるけど、みなさんなんか、漆器って言うものを日本の伝統的なものとして捉えて、意外といいイメージを持ってくださっていて。自分の職業に、こう、誇りを持てるっていう。

より良いものを作りたい、あくなき向上心。

インタビューに答える宮原さん

漆器業を続けていく中で大事にしていることはなんでしょうか?

お客さんの言うなりになるってことですかね。それと、注文が決まった時もそうだけど、最後まで面倒を見るというか、納品の時にはやっぱし見本より良いものを作ってやろうという、そういう意気込みでやらんとだね。それで、「ああ、お前よくできたな」って後でお客さんに褒められるのが嬉しいし、何よりの幸せ。漆器は使っていると定期的に塗り直しが発生する。関係性が続いていく仕事だから、真面目にやっていれば、その仕事がまた次の案件へと繋げてくれるもんです。

日常に、漆を。若い人にも使ってもらいたい。

漆製品についてはどんな風に使って欲しいですか?

昔はお茶をやっている世代っていうのが茶道具とか、日常の漆器を買いにきていたけど、みなさん高齢化して、お茶文化も昔ほど普及していない。だから、今の若い人たちが付いて来ていない。なので、そういう日常的に使う漆製品っていうのをお盆でもそうだけど全然知らないんだよね。

漆器っていうと敷居が高いという人も多いけど、決してそんなことはない。なるべくだったらたくさんの人にどんどんと使ってもらえるような、大衆的なものにしたいと思っています。木製品なので必ず割れたりかけたりはあるんで。その代わり、もし気に入ったものだったのになあと思ったら、ぜひ買ったところへ持っていって、塗り直しをしてください。そうじゃなかったら新しいものをまた買ってください。そんな高いものを買わなくていい。日常生活の道具なので、ぜひ若い人にも手に取って欲しいと思います。

柏屋常左衛門商店 店内の様子